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トークセッション PiN UP 第 1 回 美容師ヨシダアキヒロが作詞家エンドケイプにインタビュー




(左)ヨシダアキヒロ (右)エンドケイプさん


異業種の優れているところを取り入れて、自分の美容室に活かしたい。

そんな考えから気に なる人にインタビューを始めました。

今まで以上に成長するには、さまざまな人たちの発想 を知り、実践することが必要だと感じています。

第 1 回目は作詞家のエンドケイプさんに 会いに行きました。

同じ“クリエイト”する人間として、仕事をする上でどのようなことを意識しているのか、アイディアに詰まったときにどうしているのか。気になります!



初音ミクの登場が作詞家としての第一歩に


――エンドケイプさんとは以前から親交がありましたが、知らないこともたくさんあります。ずっと聞きたかったんですが、なぜ作詞家になろうと思ったんですか?


「10 代の頃から作詞家になりたかったんです。自分の作った歌詞で人が歌うことにすごく興味を持っていたというか。架空のバンドを設定して、よく詩を書いていましたよ」


――作詞の学校みたいなところへは通っていたんですか?


「いえいえ。独学です」


――これまで『ジョジョの奇妙な冒険』や、りゅうちぇるさん×カネボウ化粧品 suisaiCM ソング『TRUE TRUE』といった有名な曲の作詞を手掛けてこられましたが、最初から音楽関係者と繋がりがあって大きい作品を任さるようになったのか、それともまったく何もな いところから始まったのか、どちらなんですか?


「作詞家になりたい人ってたくさんいるんですよ。なのに、どうしたらプロになれるのかが 不明確で、プロと呼べるのは一握りの人しかない。結局、いくら一生懸命に書いていても、バンドやシンガーソングライター以外は、作詞家志望の人は自分の作品を表に出す機会が ないんですよね。実際に僕自身も分かりませんでした。そのときに初音ミクというのが出てきて、それが画期的な発明品だったわけで、初音ミクが出てきてくれたおかげで、僕も作詞 を世に出すことができたんです。その曲がたまたま大当たりして、そこからなんですよ、作詞家と名乗れるようになったのは」


――作詞家になるって大変なんですね。プロになるとクライアントから個人的にオファーが来るという感じなんですか?


「プロの業界で回ってくるコンペがあるんですね。コンペを突破して、また次のコンペが来て突破して、その繰り返しです(苦笑)」



作詞は自由だと教えてくれたのは奥田民生やローリーの歌詞だった


――この人がいたおかげでここまで来れた、こういうことをしてきたから今の自分がある、みたいなことってご自身の中でありますか?


「やっぱり継続ですね。よく何々になりたいけど、なれないという人がいるけど、継続していないだけなんですよ。自分が見てきた人はみんなそうだし、うまくいっている人は黙々と続けています。1 年やって、2 年やって、3 年やって芽が出なくても、それでも諦めずに続 けている人はちゃんと結果を出していますよ」


――僕ら美容師の仕事も練習や継続はすごく大切で、ジャンル関わらず共通していることなんですね。美容師には師匠という人がいて、憧れの存在をイメージして追っていくパターンが多いんですが、エンドケイプさんは作詞家としてそういう方はいらっしゃいましたか?


「作詞って自由なんですよ。それを教えてくれたのは10 代の頃に聴いていたユニコーンの奥田民生さんや、すかんちのローリーさんの詩でした。お二人の歌詞を見て音楽って自由なんだと思いました」


――作詞家としてのベースは奥田民生さんやローリーさんにあったんですね。


「作風は全然違いますけどね(笑)」


――答えにくいかもしれませんが、印税はいいものですか(笑)?


「いいものですね(笑)。ライブで歌っても入ってくるし、カラオケもそうだし、テレビや ラジオで流れも入ってくるし」



アイディアにつまったら酒を飲みながらひたすら歩く


――エンドケイプさんは作詞するうえで大切にしていることはありますか?


「少し不完全なものにしたほうがヒットすると思うし、記憶に残ると思っています。不完全というのは完全な円形ではなくて、ちょっと飛び出している部分があるということ。90%の 力とかそういうのでは決してなくて、力は 100%なんだけど、ちょっといびつに作ったほうが絶対におもしろいものができるんですよ。最近の世の中ってそれを否定する風潮が強くて、100%美しい完全体が正解みたいになっているんだけど、それは違うと思っています。少なくとも作詞の世界においてはね」


――言葉のチョイスで気をつけていることはありますか?


「言葉から画が浮かばないと作詞はダメなんですよ。画になりやすい言葉を使っていくのが作詞を上手にするコツでもあるのかなと感じています」


――作詞をしていてイメージが浮かばないときもあると思うんです。そういうときはどうして乗り切っていますか?


「難しいなあ…。1 回寝て日を変える。新しい朝にする。そうすると、すべてにおいて変わるわけじゃない? 思考もけっこう変わるんですよね」


――僕は星空を見たり、美術館へ行ったり、お風呂の中で心臓の音を聞いたり、無になることでイメージを膨らませることが多いんですが、エンドケイプさんは寝る以外の行動でイ メージやアイディアを膨らませることってありますか?


「う~ん、歩く。酒を飲みながらひたすら歩く(笑)。ひたすら歩くと景色が変わるじゃな い? 1 歩歩けば景色が 1コマ変わるし、そこに酒が入ると嫌でも考えごとをして歩くから、自分の中でいろんなことが変化してくるんですよね」


――僕の中にはなかったですね。真似してみたいな。日を変える。酒を飲みながら歩く。


「おすすめしますよ(笑)」



今を大事にすればいい未来がくる。だから未来は考えない


――僕らの美容業界もそうですが、作詞業界も移り変わりが激しいと思うんですね。今の時代をエンドケイプさんはどのように捉えていて、どのように乗り切っていこうかと考えていますか?


「誰も耕していない畑を見つけるのが一番なんですよね。そういう畑っていっぱいある。それを見つけて最初に種を蒔くのが一番強いから、アンテナを張り続けないといけないと思 っています。それに、アンテナを張り巡らせていれば、空いている土地を探すだけじゃなくて、空いている土地を自分で作ることもできる」


――今回、エンドケイプさんの思考を吸収して成長できたらと思うんですけど、エンドケイプさん自身は自分の未来はどのような作っていけたらなと思っていますか?


「実はそこまで考えていないんですよね。さっき駅で会ってここまで歩いてきて、今はもう1時間も先の未来でしょ。だから放っておいても未来になるから、自分が信じてやっている好きなことを続けていれば、いい未来になると思うんですよね。今をきちんと無駄にせずにやっていけば、それが未来だから」




――エンドケイプさんはつらいことはしないタイプですか? 努力のためには嫌なこともつらいこともしないといけないという考え方もありますけど、やりたいことだけをやるっていう感じですか?


「好きなことであってもつらいときはある。努力しなくてはいけない部分は絶対にあるし、辛抱しないといけないときもある。そこは謙虚な気持ちですよね。謙虚さが人生をつかさどる上で大事なことだと思っています。常に謙虚であれと。歳や地位に関係なく、100 歳になったとしても謙虚でありたいです」


――クリエイターとして謙虚にやり続けてきたからこそ今があると。


「うん、そうですね。あとはネットのおかげですよね。作詞家になる前は、サラリーマンをやりながら小説を書いてネットで公開していたんです。それが出版社の目に留まってケイタイ小説を出すに至った。インターネットがなければ今の自分は成り立っていないと、つくづく思います」



街頭でビラを配るくらいなら歌を歌ったほうが店の宣伝になる


――僕も美容師として、新しいものって何だろうと考えていますけど、僕ら美容師にアドバイスするとしたら、どういうものがあるか教えてください。


「駅前でよくビラを配っているじゃないですか。若手の人が。あの時間は無駄だと思う。あれをやっている間、技術の成長がないわけでしょ? 若手たちはやらされているわけでしょ? 別のやり方でお店の宣伝したほうがいいと僕は思います。極論をいえば、チラシを配るのをやめて、歌でも歌っていたほうがお店の宣伝にはなる」


――確かに、お店を宣伝するやり方は1つじゃないですよね。


「空いている土地の理論といっしょで、なぜかみんなビラを配る畑だけに集まっている。1つの畑だけで狭くなりながら耕している。まわりは空いているのに。そっちへ行って、自分だけのオリジナルの野菜を作れば、完全に独り占めで売れると思うんですけどね」


――今までは土地なんて空いていないんじゃないかと思っていたましたけど、空いているんですよね。考え方や視野をもっと広くしなといけないんですよね。


「どれだけ自分の美容室にフックをつけるか、それが個性だと思う。没個性じゃなくて、個性を豊にすることが大事なんじゃないかな。言うのは簡単だけどやるのは難しい。だけど、できないことではないと思いますよ」


――ありがとうございました。とても参考になりました。





Profile

エンドケイプ 板野友美さんが歌う映画イマジネーションゲーム主題歌『イマジネーションゲーム』、りゅ うちぇるさん×カネボウ化粧品 suisaiCM ソング『TRUE TRUE』、ジョジョの奇妙な冒険 4 部オープニング曲『Great Days』、等で作詞を担当。バナナアートクリエイターや室外機マニアなど多種な顔を持つ。エンドケイプとは「END」と「ESCAPE」の造語。『逃亡者のプ ール』という HP でケイタイ小説を書いていたときのハンドルネームで、今もそのまま使用している。



ヨシダアキヒロ 24 時間営業・完全予約制のヘアサロン『PiNCH』のスタイリスト兼オーナー。2 つの質問に答えるだけで OK という独自のカウンセリングと、原宿のヘアサロンで磨いた実力とデ ザイン提案によって、学生~エグゼクティブクラスまで幅広い顧客を持つ。

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